
- 2025.08.15 REPORT
-
【REPORT】玄月音夜會第三夜 本條秀太郎さんの三味三昧
2025年8月13日、松岡正剛一周忌特別企画として、「玄月音夜會」の第三夜を開催しました。ゲストは邦楽家の本條秀太郎さん。
セイゴオが初めて本條さんの演奏を目の当たりにしたのは、2004年7月、原宿クエストホールで開催された千冊達成記念イベントのステージ上のことでした。そのときのことをセイゴオは、「仰天した。感極まった。ああ、これだと思った。ここには三味線と歌の日本文化のすべてが体現されている」と書き残しています。
それ以来、セイゴオが主宰するさまざまなサロンやイベントなどに本條さんをお迎えしてきました。2014年からは、本條さんとセイゴオが徹底して「日本の歌」を遊ぶ「三味三昧」を全6回にわたって本楼で開催、セイゴオ最後の舞台出演となった2024年4月の「近江アルス東京大会」でも、本條さんが駆けつけて演奏してくださいました。
音夜會では、セイゴオとの思い出につながる端唄や歌沢に加え、セイゴオ作詞による曲なども含めて、特別なプログラムを本條さんがご用意くださいました。超絶的な三味線の技と、本條さんの澄んだ高音の歌声に、終始本楼が揺さぶられました。
この日はまた、セイゴオ一周忌をめざして制作してきた三冊の新著も勢ぞろい。特別価格での初売りをしたほか、来場者にとっておきのプレゼントも贈られました。
会場の本楼では、セイゴオ一周忌として用意した紫の供花と、セイゴオ筆の「三味三昧」の行灯がお客様をお迎え。
数多くのセイゴオとの共演を重ねてきた本條さんが、この日の一曲目に選んだのは、歌沢「夜の雨」。本條さんの撥さばきによる三味線の張り詰めた響きと、遠くからセイゴオを呼び戻すかのような歌声に、たちまち本楼の空気が震えだす。
進行の太田香保(松岡正剛事務所)は、本條さんと同郷の潮来出身。実は、本條さんとセイゴオの出会いは、太田が縁結びをしたものだった。などなど、意外なエピソードをご紹介。
休憩の入りで、晶文社の江坂祐輔さん(写真右)とアルテスパブリッシングの木村元さん(写真中)が登場。それぞれ、セイゴオの新著『世界のほうがおもしろすぎた』(晶文社)と『百書繚乱』(アルテス)を手に、推しポイントを語る。
音夜會恒例の、まほろ堂蒼月さんによる休憩のお菓子。この日用意されたのは、香ばしい麦こがしのおはぎ。
第二部冒頭では、モニターにセイゴオが登場。二人の若いチェリストの伴奏で、自作の「鳥の歌」の歌詞を朗読する。カザルス編曲の「鳥の歌」を連奏する井上鑑さんのプロジェクト「連歌 鳥の歌」のためにつくったもの。
セイゴオの「鳥の歌」朗読につづき、本條さんが同じ歌詞を、三味線と胡弓を伴奏に歌う。胡弓はアメリカ出身のお弟子さん、本條秀英二さん。「やくもたつ 巷には 鳥たちが 眠る たらちねの 母なる国……ああ 時行く鳥よ 何を語らん 何を歌うか いま」。
「三味三昧」のためにセイゴオが作詞、本條さんが作曲した「色月」(いろづき)の演奏。掛詞を駆使して、浮世の奥で粋を交らせる「炭男と紙縒りの女」の逢瀬を描いたもの。
ラストの曲は、晩年のセイゴオが思いを寄せていた近江にちなんだオリジナル曲「蝉丸」。本條さんは、三味線で琵琶の音を表現する超絶的な撥さばきを見せる。
デザイナー・造本家の町口覚さんが登場。町口さんの編集・造本によるセイゴオの三冊目の新著にして初の書画集『Birds』を愛情込めて紹介。この日の来場者全員に、プレゼントしてくださった。
「連歌 鳥の歌」の主宰者として井上鑑さんも登場。改めて「鳥の歌」に託した思いを語る。井上さんは10月22日の第5回音夜會のゲスト。
音夜會恒例の歓談の案内をする音夜會マダム傳田京子さん(写真右)。ワインと料理を用意してくださった白百合醸造のマダム内田由美子さん(写真左)のご紹介。
この日、内田さんが用意してくださったのは、出汁巻、鰻の押し寿司などなど、セイゴオの好物ばかりで組み立てた和風味のフィンガーフード。写真は、白百合醸造さんの絶品のロゼワインとともに。
第1回ゲストのあがた森魚さん(写真左)と、第2回ゲストの山下有子さん(写真中)も、お客様としてご来場。本條さんとの記念撮影。
*松岡正剛追悼「玄月音夜會」、第四回は9月10日(水)、邦楽家の西松布咏さんをお迎えして、開催いたします。