
- 2025.07.29 REPORT
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【REPORT】玄月音夜會 第二夜―山下有子さんと青い夜
2025年7月18日、松岡正剛追悼記念企画「玄月音夜會」の第二夜を開催しました。ゲストは、ピアニスト・作曲家の山下有子さん。
セイゴオと有子さんは、デザイナーの羽良多平吉さんの紹介で知り合いました。有子さんのピアノと作曲のセンスに瞠目したセイゴオは、以来、みずから主催する塾や倶楽部に有子さんをお招きしては、演奏を所望。有子さんのピアノを伴奏に、数時間にもおよぶトークライブを開催したこともあるほどです。
有子さんは、セイゴオの他界後、長年にわたってパーソナリティをつとめるラジオ番組「アリコ ピータースレストラン」(FM京都)で、セイゴオにまつわる思い出話などを語り続けてくださっています。
音夜會では、そんな有子さんとセイゴオの出会いや思い出にまつわる曲、またセイゴオが幼少期に聞いていた童謡などを組み合わせながら、ときに本楼の書棚に丁寧に音を並べるように、ときにエモーショナルな夏嵐を起こすように、有子さんの自在な音世界が繰り広げられました。
オープニングは、バッハ「ゴルトベルク変奏曲」のアリア。有子さんならではのアレンジによって、神妙さと斬新さが加わった。「ゴルトベルク」はセイゴオがこよなく愛した曲で、もっぱらグレン・グールドの演奏を聞いていた。
北原白秋作詞「ちんちん千鳥」をはじめ、セイゴオが幼いころから好んでいた「せつない響き」につながる曲を、有子さんがいくつか組み合わせて演奏。
休憩の入りで、まほろ堂蒼月の御主人・山岸史門さん(写真右)が登場、この日用意した和菓子「赤しそ餅」をご案内。左は音夜會進行の太田香保(松岡正剛事務所)。
休憩明けは、いきなりセイゴオによる『銀河鉄道の夜』の朗読、からの宇宙講義(2012年の連塾ファイナル「本の自叙伝」の映像より)。そこに有子さんのピアノが加わって、本楼が星空のように澄んでいく。
青い本楼が一転して赤くなり、有子さんのアレンジによる、あがた森魚さんの「赤色エレジー」へ。第一夜のゲストのあがたさんもこの日はお客様として来場(写真下の左)、羽良多平吉さん(写真下の右)とともに有子さんのピアノを堪能。
有子さんの故郷である岐阜県の郡上踊り『かわさき』をアレンジした「Rivers of memory」を経て、太田から有子さんに、「日本の音」への関心と思いをインタビュー。
エンディング曲は、有子さんが音楽を担当した映画「千年旅人」(辻仁成監督)より、「tsuki ni Yurete」。セイゴオとともに有子さんのCDにメッセージを寄せた田中優子さんは、有子さんのピアノについて「その音に身をゆだねていると、心の中にしまわれている風景が尽きることなく呼び出されてきて、いつの間にか、ふだんは隠れひそんでいるもうひとりの私になる」と書いている。田中さんはこの夜、初めてその有子さんの演奏を最前列で経験していた。
演奏会終了後は、ライブ参加者だけの恒例のお楽しみ。甲府の白百合醸造さんによるワインと「宝石のようなフィンガーフード」を囲んでの歓談。
夏の着物姿も涼しげな音夜會マダムこと傳田京子さんが、白百合醸造のマダム内田由美子さんを紹介。内田さんはこの夜のために、何時間もかけて料理の仕込みをしてくださった。
*松岡正剛追悼「玄月音夜會」、第三回は8月13日(水)、邦楽家の本條秀太郎さんをお迎えして、一周忌特別企画として開催いたします。