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2021.08.02 EVENT

EVENT 【千夜千冊エディションフェア特集㉛】大阪千里に登場した知の神殿あるいは知の砦

大阪からまたエディションフェアの情報が届きました。日本のニュータウン開発の先駆けとなった千里で店を構える「地元密着型の本屋さん」、田村書店千里中央店です。当地にゆかりのあるイシス編集学校の川野貴志さんが取材し、大阪フェアの取材を統括している野嶋真帆さんが撮影をしてくださいました。お二人とも多くの編集学徒を指導してこられた名師範です。

以下、お二人のレポートと写真によって、田村書店のフェアの様子をご紹介します。

大阪千里は、1960年代に日本初のニュータウンとして開発され、関東圏の多摩や港北などのニュータウン開発にも影響を与えました。白亜の殿堂のようなこの建物は、ニュータウンの中心ともなる千里中央駅とショッピングモール「せんちゅうパル」。

 

「せんちゅうパル」の専門店街では、色とりどりの切り絵の隊列がお出迎え。メキシコの祭事などで飾られる切り絵「パペルピカド」を模したものです。メキシコでは、クリスマスや結婚式のほか、11月の「死者の日」にも飾られるものだそう。「せんちゅうパル」のばえる風物詩として人気が広まりつつあります。

 

田村書店は、「せんちゅうパル」3階と4階に位置しています。大阪府・兵庫県一円に十店舗以上を構え、千里中央店はその第2号店。土地柄なのかファミリー層の利用が多く、とくに児童書が充実しています。

 

4階レジちかく、またしても白亜の神殿を思わせるような、お洒落な一等地にしつらえられたエディション棚。黒地のポスターとカラフルな「エディション」カバーがよく引き立って、パペルピカドにも負けない映えのスポットに。松岡校長、千里にようこそ。

 

奥行きが浅く白い枠のフェア棚の額縁効果で、それぞれの棚が立体作品のようにも見えます。イシス編集学校のパンフレットも存在感を主張しています。

 

「知祭り棚」の横には、なぜか岡本太郎を特集した「Casa BRUTAS」6月号が鎮座。表紙の「太陽の塔」はほかならない千里吹田のランドマークであり、ここ田村書店千里中央店は、大阪万博が国じゅうの耳目を集めていたころに産声を上げました。なんといっても、日本の伝統美術をゼロベースで見直すべきだと『日本の伝統』で挑発した太郎こそは、セイゴオ知祭りの守護神にもふさわしい。

 

取材に応じて下さった西田勝彦店長。「提案型の本棚というよりは、地域のお客様の求める本を取りそろえるように心がけています」と穏やかに語りつつ、お気に入りの千夜をうかがうと、堺利彦を扱った『パンとペン』と杉山茂丸の『俗戦国策』という、硬骨な二冊をあげてくださいました。『遊』と『遊学』の読者でもあり、杉浦康平ファンでもあるそうです。

 

そんな西田店長お勧めのエディションは『芸と道』ですが、『資本主義問題』も関心があるとのこと。「今の時代の行き詰まりにフィットしていますね。単なる思想の右左でなく、システムで考えているところに特徴を感じます」。

 

ファミリー層中心の書店といいつつも、コロナ禍のなかで自然科学関連のハイブロウな本も出るようになったそうです。太陽の塔の見下ろすこの地で、一から知を組み直す小さな砦が、地元の愛され書店に立ち現れているようです。

 

 

西田店長に取材中の川野さん(写真左)。

 

田村書店千里中央店のフェアを取材した川野さん(左)と野嶋さん(右)からも、それぞれのお気に入りのエディションについてコメントをいただきました。

 

川野さん:『面影日本』
意義と正義で充満しきっている今こそ、「日本という方法」が格好の処方箋であることを、読んで噛みしめ直しています。本棚からこれを取り出した妻は、西行のところを何度も何度も読んだそうです。

 

野嶋さん:『情報生命』
生命もどきの情報か、情報剥き出しの生命か。ウイルスという憎き情報生命仲間が暴れる日々に手放せない1冊。敬愛するベイトソンや清水博から「生命ぶり」を学びたいのです。

 

 

田村書店 千里中央店

https://tamurabook.wixsite.com/bookstore/blank-7