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2023.10.17 PUBLISHING

【PUBLISHING】津田一郎さんとの対談本『初めて語られた 科学と生命と言語の秘密』発売

2023年10月18日、津田一郎さんとセイゴオの対談本『初めて語られた 科学と生命と言語の秘密』(文春新書)がいよいよ発売となります。

 

文春新書としては異例の、まっ白なカバー・帯(写真:後藤由加里)

 

数学者にして複雑系科学の第一人者である津田一郎さんと、編集工学者セイゴオが、それぞれの専門性に根差しながら、そのタイトルどおりに、広範な科学の諸領域と最先端をめぐりながら、生命や脳や言語の秘密を解き明かしていきます。

 

津田さんとセイゴオとの出会いは、1982~3年に遡ります。バイオホロニクスを立ち上げた清水博さんの研究室でセイゴオが編集工学の講義をしたときに、聴衆として参加していた津田さんと初めて顔を合わせ、以来、津田さんが取り組んでいたカオス理論とセイゴオが構想していた編集工学をクロスする対話をしつづけてきました。セイゴオは、「津田さんは初めて会った時からジーニアスだと確信した。ずっとファンだった」とのこと。

 

本書のために行われた最初の対談から本の完成までは、コロナ禍やセイゴオの肺ガン手術・治療などをはさんで3年以上がかかりましたが、会えばたちまちトップスピードの対話が展開していく二人の思考と言語のライブ感がみごとに再現された本となっています。

 

 

2019年2月に行われた対談の写真(イシス館本楼)

 

私たちにはまだ、根本的でわかっていないことがいろいろある。たとえば、なぜ生命体は光合成をする植物から進化をしはじめて、動物という自分では栄養をつくれない他者依存的な生物を発達させてきたのか‥‥ヒトが脳をつくって「自己」や「意識」をもつようにしたのはどうしてか…また、文明が「物語」を必要とした理由、記号や通貨などのトークン(代替物)を重視した理由、音楽やダンスやスポーツやお笑いが廃れない理由なども、説明がついていない……。津田さんはこれらのことを、カオスの研究から展望してきた。私は編集工学のしくみを通して考えてきた。二人の共通するのは「世界はどのように発生し、どんなふうに維持できるようにしたのか」ということである。

松岡正剛あとがき「デーモンとゴーストの対話」より

 

本書は科学、生命、言語に焦点を当て、時には文系的思考マイナス理系的思考、また時には理系的思考マイナス文系的思考という引き算を互いにしあいながら、視点のずれを起こすことで、文系のセンス、理系のセンスを際立たせている。……本来、人はこの両方を併せ持ち、時に脳内で火花を散らせながらその人独特の思考方法を身につけているものだ。……本書の対話では「方法」ということにこだわってきた。そして、言語と隠れた意識の関係を中心にして編集工学の方法論が初めて明かされ、生命と情報に対するカオス的解釈の方法論が明かされたのだった。

津田一郎あとがき「際をめぐっての対話」より

 

帯にはデーモン化した津田さんとゴースト化したセイゴオ。デーモンは、科学のなかでしばしば仮想されてきた数理的なものたち。ゴーストは機械にも脳にも文化にも人間が棲まわせる「心っぽい何か」。

 

 

津田一郎+松岡正剛
『初めて語られた 科学と生命と言語の秘密』

文春新書 2023年10月20日発行 1400円(本体)+税

 

第1章 カオスと複雑系の時代で

――理科的思考の来し方と行く末/新しい世界観を提示したカオス理論/線形数学から非線形数学へ/カオス的脳幹……ほか

 

第2章 「情報」の起源

――「情報」の起源を考える/「時間」の始まり/生命の条件をめぐる/情報が先か、部品が先か/「情報」の起源はAI化できるのか?……ほか

 

第3章 編集という方法

――なぜ「編集工学」なのか/「膜の発見」/見えないものを見る 代数の発明/代数とトートロジー/数学はなぜ論理を必要としたのか……ほか

 

第4章 生命の物語を科学する

――「物語る」とは何か/科学にも物語はあるか/デヴィッド・マーとの出会い/生命の統一原理は書けるのか/拘束条件と進化/エルゴード問題と偶有性……ほか

 

第5章 脳と情報

――脳と「情報の編集」/学習とニューロンの結合/神経系と「分子言語」/「閾値をどう決めているか/「自己他者言及」/酵素は編集子

 

第6章 言語の秘密/科学の謎

――「言語の起源」の謎/言語とタンパク質の「選択原理」/観測者とは何か/「定常的な自己」はなぜ可能か/「心」と「言語」は似ている……そのほか

 

第7章 「見えないもの」の数学

――非線形的な世界/ローレンツの世界観/センスがいいとは何か/「見え」の問題/深く思考する快感を求めて

 

第8章 「逸れていくもの」への関心

――「先行した世界」に対する態度/感動を伝えるための世界観/「逸れていくもの」への関心/杉浦康平のデザイン/本棚も編集空間

 

第9章 意識は数式で解けるのか

――「まれな現象」を感知できる意識/「意識の捨て方」の仮説/科学と神秘/世界の成立には引き算が必要だ/「いない、いない、ばあ」の原理

 

第10章 集合知と共生の条件

――人間に集合知はあるか/無意識の研究はなぜ深まらないか/学問集団のあり方すら集合知とスモールワールド/寄生と共生

 

第11章 神とデーモンと変分原理

――変分原理は神の原理/「存在の発現」の秘密に向かう/物語生成システムはできるのか/複雑系の定義を書き換える/デーモンとゴーストの再会

 

あとがき1 松岡正剛「デーモンとゴーストの対話」

あとがき2 津田一郎「際をめぐっての対話」

 

 

見本を手に、デーモン化したセイゴオ

 

記事:太田香保
写真:後藤由加里+松岡正剛事務所