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2022.01.21 PUBLISHING

Publishing 千夜千冊エディション#23『日本的文芸術』刊行

千夜千冊エディション23冊目となる『日本的文芸術』が完成し、ただいま全国に配本中、まもなく各書店のエディションコーナーにお目見えします。

 

 

そのタイトルどおり、千夜千冊が取り上げてきた古今の日本の文芸を、セイゴオならではの方法的観点で構成しています。表紙には、歌聖こと柿本人麻呂のちょっと謎めいた肖像が、帯には「セイゴオもしてみむとてするなり」のイミシンなキャッチがあしらわれ、色調こそ閑雅な趣ながら、ただならぬ気配を醸しています。

 

第一章は、その人麻呂を通して古代の言霊観念と代作術を掘り下げた記念すべき第1500夜をかわきりに、松尾芭蕉、高浜虚子をならべて日本の「うつし」の文芸を浮き彫りにする「詠む/写し/代わる」。

 

第二章「虚実をまぜる」は、大胆な仮託の技法を成し遂げた紀貫之の『土佐日記』にはじまって、近松浄瑠璃、『雨月物語』、『南国太平記』などのリアル・バーチャルが綯交ぜに紡がれる江戸~近代の多様な文芸を、さらに半村良『産霊山秘録』、小松左京『日本アパッチ族』、五木寛之『風の王国』と、「影の一族」の暗躍を描いた傑作大衆小説までが連打されます。

 

第三章は一転して明治以降の私小説や富永太郎・中島敦などの夭折した作家たちの作風、梅崎春生や古井由吉などの異色作家、それにつげ義春と吉本ばななの表象力をたどって、「はぐれた私・小説」という見立てを披露。

 

ラストの第四章はずばり「少しエロチックにする」。田中貴子・宮田登さんの聖なる女とヒメにまつわる炯眼の書を掲げたうえで、西鶴、鏡花、川端、吉行、水上勉を乱れ打ち。鈴木いづみと松浦理英子と村田紗耶香の絶対官能性や知感文芸術に潔く脱帽して見せて締めくくっています(村田紗耶香さんは、エディション『方法文学』の口絵にも登場)。

 

もとより、『日本的文芸術』に収録されたのは、千夜千冊がとりあげてきた日本文学・J文学のなかのほんの一部です。セイゴオの目論見では、今後さらに3冊ぶんの日本文学エディションを生み出していくことになるようです。

 

 

人麻呂の表紙をめくると、口絵には、梶井基次郎の『檸檬』の手書き草稿が収められています。よく見ると基次郎が「檸檬」を書き損ねて困っているような、意外な場面が浮き彫りに。

 

 

『日本的文芸術』
角川ソフィア文庫
2022年1月25日刊行
全444ページ 定価:1540円(税別)

 

 

記事:太田香保 写真:寺平賢司

 

*本稿写真に登場する黒織部の絵付けおよび箱書きはいずれもセイゴオによるもの。2012年、中田英寿さんプロデュースの「REVALUE NIPPON PROJECT」のために、土岐の陶芸家・林恭介さんと作家の町田康さんとセイゴオがコラボレーションして作成した「久侶於里辺」シリーズのなかの一つ。