セイゴオちゃんねる
最新情報最新情報
2021.06.15 EVENT

【千夜千冊エディションフェア特集⑧】学知ロマンの街・松本の知祭り

千夜千冊エディションフェアは、今月から7月にかけて、甲信越地域でも続々開幕します。なかで、いちはやく6月7日にスタートを切った松本市の丸善のフェアの様子をレポートいたします。

 

丸善松本店はJR松本駅から徒歩5分、ビルの地下1Fから2Fまでを占め、一般書から専門書まで充実した棚揃えを誇る大型書店です。

 

松本市深志のビルコングロMに位置する丸善松本店

 

店長の土屋容さんによると、丸善松本店は地域型の書店のなかでも異例なほどに思想書がよく売れる店舗なのだとか。「当店では、もともと現代思想書棚に松岡正剛さんのコーナーがありますし、千夜千冊エディションもコンスタントに出ていますよ」。そう話しながら、地下1階に設置された「千夜千冊エディション」知祭り棚を案内してくださいました。

 

人文書棚の一角に設置された知祭り棚。

 

棚からはみ出すように設置されたポスターやPOPが、知祭りらしい賑わいを演出。棚づくりは人文・語学書担当の吉江いずみさん。それぞれの書籍にふさわしい位置を細やかに工夫してくださっていた。

 

側面にも各種ポスター・POPを展示し、フェア記念小冊子(販売用)をディスプレイ。漆黒のデザイングッズたちが異様なほど力強いエネルギーを放っていた。

 

土屋店長のお気に入りの一冊は『情報の歴史21』。フェア棚の一番うえに面陳されていた。

 

 

土屋店長はこれまで東北を含む各地の書店3店舗ほどで店長をつとめ、ここ松本店には1年前、ちょうどコロナ禍の真っ只中に赴任して来られたそうです。「おかげでまだ松本の歴史文化スポットを回ることもできていないんですよ」。感染者こそあまり出ていないものの、やはり観光客が激減し街全体がそのあおりを受けているなか、書店にくるお客様の層にも多少の変化が起こっているとのこと。

それでも思想系の新刊書がよく売れるといった松本店ならではの特色も、まだまだ健在のようです。「このエリアで思想系の本をしっかり揃えているところといえば、私どもと、あとは長野の平安堂さんくらいではないでしょうか。ですから棚揃えだけは守り続けなければと思っているんですよ」。

 

 

松本といえば、旧開智小学校や旧松本高校など、明治・大正時代につくられた洋風の学舎がいまも大事に保存されている「学知ロマン」の街でもあります。教育立県をめざす永山盛輝県令(知事)の尽力によって、明治5年には松本を含む筑摩県の就学率が全国一位となるなど、もとより教育振興事業が盛んな土地柄でもありました。そのように筑摩県が育んだ学知ロマンが、人文書の棚揃えに心をくばる丸善松本店にも、確かに息づいているようです。

 

旧開智小学校校舎(国宝・明治9年)は、松本市の大工棟梁・立石清重が設計。擬洋風建築の傑作としてセイゴオの日本語りなどでもたびたび紹介してきた。現在、耐震構造工事のため長期休館中。

 

旧松本高校本館(重要文化財・大正9年)。唐木順三、臼井吉見、北杜夫、辻邦生などの文学者を輩出。現在は校舎保存とともに市民の教育文化活動に開放されている。

 

 

写真・レポート:太田香保