- 2024.03.18 PUBLISHING
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【Publishing】千夜千冊エディション30冊目『数学的』刊行
千夜千冊エディションの新刊『数学的』が3月25日発売となります(書店にはもうそろそろ出始めます)。これをもって千夜千冊は、2018年刊行の1冊目『本から本へ』から数えてちょうど30冊を達成します。
不思議な三角形が描かれた表紙カバー。このデザインの秘密は後述する。字紋は「虚」。
セイゴオにとって数学は子どものころから憧れと親しみをもってきたものであり、編集工学を組み立てるときにも大事な柱になってきたものです。ただし、そのようなセイゴオの数学好みは、30代に書いた一部のエッセイや数学をテーマにした千夜千冊でしか明かされてきませんでした。昨年秋に上梓した数学者の津田一郎さんとの共著『科学と生命と言語の秘密』で、初めてセイゴオの数学的精神がいかに編集工学の礎になっているかということが開陳されたくらいなのです。
本書『数学的』は、セイゴオが『科学と生命と言語の秘密』を仕上げた直後から編集構成に取り組んできたものです。本書に組み入れることを想定し、Web千夜千冊のほうでも1830夜『セクシーな数学』、1831夜『数学する身体』から1837夜『ガウスの生涯』まで数学本をたてつづけにアップしつづけ、またさらに1838夜『偶然とカオス』から3夜連続でカオス論にちなむ本を取り上げました。これらの新千夜千冊もほとんど、『数学的』に収録されています。つまり、本書はセイゴオの数学的精神が『科学と生命と言語の秘密』に続いてあますことなく発揮された貴重な一冊といえます。
さらに、本書をもって千夜千冊エディションは2018年のシリーズスタート以来、30冊を達成しました。『数学的』が30冊達成記念の一冊になったことは、セイゴオにとってたいへん感慨深いようです。
イシス館の数学棚の前で、『数学的』を手に「30冊達成!」をアピールするセイゴオ。
記念すべき30冊目のエディション『数学的』のデザインも、シリーズの造本設計を担う町口覚さんとその右腕である清水紗良さんによって、これまでにない趣向を凝らしたものとなりました。まず表紙カバーは、生成AIを活用したデザインワークによって、セイゴオも唸るようなユニークな表象が実現しました。
また口絵には、『科学と生命と言語の秘密』の共著者であり、本書にも『カオス的脳観』(千夜千冊107夜)を収録している津田一郎さんが登場。津田さんには本楼でカオスに関する黒板講義をしていただき、その様子を撮影して口絵にしました。
採用された表紙カバー(写真上)以外に、多数のデザイン案が町口さん・清水さんから提案された(写真下)。本書に登場する数学的・編集的キーワードはもちろん、デザイン・アート史をふまえたコンセプトなどもAIに与えることで、これらのイメージをつくりだしていったという。それぞれの生成画像にあわせて字紋「虚」のあしらい方も絶妙に変化させているため、いずれも『数学的』の表紙カバーとして成立している。
今年2月、津田一郎さんに本楼でおいでいただき撮影を行った。セイゴオのお気に入り本『数学者たちの黒板』 (草思社)を見ながら、黒板講義の方針を相談する。(写真左から)津田さん、町口さん、清水さん、カメラマンの熊谷聖司さん。
津田さんの黒板講義の聴き手は、その場に居合わせた編集&デザインメンバーたち。途中からはセイゴオも混じってすっかり聞き惚れていた。
千夜千冊『数学的』
角川ソフィア文庫
2024年3月25日刊行 税別1800円
第一章 数学的センス
オスカー・ベッカー『数学的思考』
キース・デブリン『数学:パターンの科学』
グレゴリー・J・チャイティン『セクシーな数学』
スチュワート・シャピロ『数学を哲学する』
サイモン・シン『フェルマーの最終定理』
ほか
第二章 数学をつくる
ゴットフリート・ライプニッツ『ライプニッツ著作集』
ピエール・シモン・ラプラス『確率の哲学的試論』
G・ウォルド・ダニングトン『科学の王者 ガウスの生涯』
ヒルベルト&フォッセン『直観幾何学』
ハオ・ワン『ゲーデル再考』
ほか
第三章 非線形で考える
モーリス・クライン『不確実性の数学』
アンリ・ポワンカレ『科学と方法』
ダヴィッド・ルエール『偶然とカオス』
山口昌哉『カオスとフラクタル』
津田一郎『カオス的脳観』
ほか
第四章 情緒だって数学である
村田全『日本の数学 西洋の数学』
岡潔『春宵十話』
吉田武『虚数の情緒』
森田真生『数学する身体』
スタニスワフ・レム『虚数』
ほか
今回の撮影の背景は、アーティストの富田勉さんの作品。2000年にセイゴオが「イシス編集の国」をネット上に建国した際に、制作していただいたもの。
記事:太田香保
写真:寺平賢司 太田香保(セイゴオの三つ指写真のみ)
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