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2020.11.25 REPORT

朝日教育会議2020に出演

11月22日、法政大学で開催された「朝日教育会議2020」にセイゴオが出演しました。これは朝日新聞社が大学をはじめとする各教育機関とともに2018年から開催している連続シンポジウムで、今年は東京理科大学をかわきりに、立正大学・拓殖大学・共立女子大学ほか全10大学が参画、すべてライブ配信によって開催されています。

 

セイゴオが出演した22日は、「これからの大学 for ダイバーシティ~多読・会読・連読の場~」をテーマに、法政大学総長の田中優子さんが基調講演を行い、それをうけてセイゴオと隈研吾さんがプレゼンテーション、さらにコーディネータの一色清氏の進行で三人によるパネルディスカッションが行われました(会場は法政大学ボアソナードタワー・スカイホール)。

 

田中優子さんは「コロナ禍で発見した5つのこと」と題し、大学がオンライン授業への転換を余儀なくされたことによって改めて考えなおすことになった、教育の現場におけるコミュニケーションのあり方や、オンラインが学生にもたらした意識変化などをアンケート結果などもまじえて紹介。これからの大学が重視すべきこととして、「多読・会読・連読」による言葉と思考の深化、またそれを起こさせるための時間と空間の作り方などを提言しました。

 

コロナ禍は「学び」の原点を見つめ直すチャンスにもなったと語る田中優子さん

 

 

セイゴオのプレゼンテーションは「読書はもともとリモートだった」。教育の現場でますます重視される「読書」の秘密が、じつは脳科学的にも認知科学的にも、また生物学・人類学などにおいてもまったく解明されてこなかったという問題提起に続き、言葉と文字の発達とともに進んできた読書の歴史や、印刷技術と国民国家の成立によって広まった「テキスト社会」のあり方を高速に振り返りました。さらに、これからの書店や図書館は、たんに本を並べておくのではなく、新しい「読む空間」のあり方を提案すべきであるとして、さきごろオープンした角川武蔵野ミュージアムの「エディットタウン」の本棚空間や本の配列を写真で紹介しました。

 

「読む」ことの科学的・歴史的解明が遅れていると指摘するセイゴオ

 

 

隈研吾さんは「学びの庭」と題して、「本」は世界を媒介する「情報」であると同時に「もの」であるということ、つねに「本」と「もの」とをまたぐことで自らの設計の仕事がなりたってきたということを、角川武蔵野ミュージアムをはじめ、「那珂川町馬頭広重美術館」「竹屋」「カサ・アンブレラ」などの作品写真を紹介しつつ、語りました。

 

建築という「学び」の場における「本」と「もの」の重要性を説く隈研吾さん

 

 

シンポジウムでは、一色さんの進行でまずはそれぞれの講演とプレゼンテーションに対してのコメントを交換。田中さんの「読むものは本だけではない、モノも自然も建築も読み方が重要だと感じた」という発言をかわきりに、セイゴオが「読む」にかかわる情報選択の重要性と、その奥にある生命の情報選択の戦略について言及。「本の選択」のためにも多読術が必要であるということをセイゴオが語ると、すかさずイシス編集学校で「多読ジム」を学ぶ田中さんが、そのカリキュラムを紹介する場面も。

 

隈さんが建築を学ぶには必ずしも建築原論から入る必要はないということを自身の経験をまじえて語ると、セイゴオは先達者の読書経験に学ぶことの重要性を力説。さらにパーソナルコンピュータの開発者たちが着目した「ブラウズ」や「マルチウィンドウ」をヒントに、読書においても多様な「窓」を開けていく可能性や、世界的に教育施設の建築が自分で場所を選べるリビングルーム化しつつあるといった話が次々に折り重なり、田中さんがそれこそが大学が果たしていくべき役割であり、実現していくべきものであると引き取りました。

 

パネルディスカッションでは、セイゴオがいまの図書館や書店のあり方に厳しい注文を付ける場面も。

 

 

なお、このシンポジウムの採録記事が、12月末に朝日新聞に掲載される予定です。また2021年1月から記録動画の配信も行われます。詳細は追って当チャンネルでお知らせします。

 

レポート:太田香保
現場写真:後藤由加里