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2018.05.02 REPORT

『日本問答』刊行記念イベントレポート

4月21日(土)、法政大学の薩埵ホールで、セイゴオと田中優子さんによる対談イベント「日本問答・江戸問答」が開催されました。当イベントは、昨年11月に刊行された2人の初となる対談本『日本問答』を記念して行われたもの。主催は、今年の2月に法政大学に発足したばかりの「江戸東京研究センター」です。イベント告知直後から申し込みが殺到し、800人の会場は超満員。司会を建築史家の陣内秀信さんが務め、ディープな日本談義が繰り広げられました。

 

 

はじめに、司会の陣内さんから冒頭あいさつ。陣内さんは今年の4月まで、「江戸東京センター」のセンター長を務められていました。

 

「『日本問答』の刊行が「江戸東京センター」の発足と同じ時期であったことを運命のように感じています。日本が持ちつづけた価値観とは一体どのようなものなのか。そしてなぜ消えてしまったのか。そのことを問うためにもこの本は格好のテキストだと思います」(陣内)。

 

 

続けて、田中さんによるソロ講義。専門である江戸文化の例を引き合いに、日本文化に通底する方法を分析。特に「やつし」や「もどき」、「見立て」といった卓越した模倣技法が、江戸では躍動していたといいます。

 

   

「“日本人の発想構造”とは一体何か。文化を継承し、未来に活かすためにも、着物や歌舞伎といった文化を、バラバラにではなく、全体として理解する必要があります。『日本問答』の新しい点をあげるとすれば、文化の方法と構造を提起していることにあります」(田中)。

 

 

次に登壇したセイゴオは、日本の方法には“デュアル構造”がベースにあるのだと説明し、「グローバル」や「普遍」には向かわない国家像を持っていたと強調します。

 

「『日本問答』でテーマにしたのは、日本は“内と外”をどのように考えてきたのか、ということでした。中国をはじめとする外からの文化を取り込みつつ、日本化していった。それによって“内と外”の両方を併存させる感覚ができたのだろうと思います。漢字と仮名、神と仏、天皇と将軍、旅館とホテル。これらのような一見矛盾したものが両立することで、かえって安定をつくるという不思議なシステムを日本は作ったのです」。

 

最後は陣内さんの進行でセイゴオと田中優子さんの対談。『日本問答』でもキーワードになっている“面影”(おもかげ)が日本文化をひもとくヒントになるのではないかという話にまで展開しました。

 

松岡「模倣しつつもズレても構わないという“もどき”の手法が日本にはありました。それは対象を複製するのではなく、その背後にある“面影”を捉えていたのではないか。だからこそ、矛盾したものを両立させるデュアル構造ができたともいえます。そこを突き詰めていけば、日本の価値観を新たな語り口で表すことができるはずです。21世紀の浮世絵がVR・ARになっていく可能性はあると思いますね」

 

田中「先日亡くなった作家の石牟礼道子さんの作品を読んでいると、一番の記憶のピークが2歳から5歳までだということがわかります。生き物や自然と語り合ってしまうような世界です。その幼少期の記憶が面影となり、フィルターとなって言葉を紡いでいる。『日本問答』で最後のほうに松岡さんと幼少期の話をしているのは、お互いにそれぞれの面影が何かを探ろうとしているからなんです。一番大事な面影は、自分の中にあるといえます」。

 

最後にセイゴオは日本文化を21世紀に継承し活用していくには、一人ひとりが日本の技法を学んだ上で、さまざまなジャンルの職人になる必要があると強調しました。また田中さんは、イシス編集学校で学んだことを引き合いに多様なジャンルをまたいでいくこと、それが可能な学習共同体の場をつくることの重要性を語り、イベントを総括しました。