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2018.03.29 REPORT

宗教シンポジウム第3回「宗教と生命」レポート

3月21日(水)、東京・有楽町朝日ホールで2017年から連続開催されてきた角川文化振興財団主催のシンポジウム「激動する世界と宗教―私たちの現在地(全3回)」の最終回が行われました。

 

このシンポジウムは全3回ともチケットが完売し、大入り満員。現実社会に影響を与えている「宗教」や「思想」とどのように向き合うべきかという問題意識のもと、第一線の研究者・識者が意見を交わし合いました。

 

セイゴオは、元外務官・作家の佐藤優氏、ジャーナリストの池上彰氏とともにレギュラー出演者として登場。毎回全登壇者によるパネルディスカッションの総括役として、複雑で多義にわたる宗教の問題をめぐって意見を引き出し、モデレートしてきました。

 

その最終回のテーマは「宗教と生命」。池上氏と佐藤氏の対談、安藤泰至氏(生命倫理学者)と山川宏氏(人工知能研究者)の基調講演を受けて、パネルディスカッションに登壇したセイゴオは、冒頭で「生命およびAI、コンピュータの問題はこれまで人類が築き上げてきた価値観をゆるがす、最大にして最後のテーマである」と、議題を提起しました。

 

 

(以下、パネルディスカッションで交わされた発言の抜粋をお届けします)

 

科学テクノロジーが発展をとげる一方で、なぜ信仰や祈りといった宗教的精神が残っていくのか。そもそも宗教の誕生は、人類の必然であったとセイゴオは言い切ります。

 

「人類の誕生において、驚異的な発明だったのが脳と言語と道具です。それらが互いに関係し合うことで人間はおどろくべき進化を遂げました。特に言語は、人間がイメージや表象を持つことを可能にしました。一方、言語には恐ろしい力が秘められていると感じた古代の賢人たち、たとえば老子やブッダ、ユダヤの預言者やパウロたちは、言語の使い方に独自の範囲設定を課していった。それがのちのマントラや経典、聖書や預言書になっていったのです。」

 

そう力をこめて、宗教成立の背景について説いたあと「宗教は社会と密接にむすびつき、アートや芸能、学問の発展に寄与していった」と宗教が人間にもたらした恩恵について言及しました。しかし、近代化が進み、国が国民国家に統合され、資本主義が進捗していくにつれて、宗教とともにあった人類の歴史がわかりにくくなっていったと、セイゴオはいいます。さらに「これまでの歴史をさまざまな角度から見渡せる大きな窓こそ、“情報”である」と独自の見解を表明し、ディスカッションの端緒が開かれました。

 

各登壇者もセイゴオの見方をうけるかたちで、宗教と情報社会、AIと人間の関わりをめぐり意見を交わし合います。

 

 

池上彰氏「たとえ同じ事実だとしても“改ざん”か“書き換え”にするかという判断は、人間にしかできない」。
山川宏氏「現代の技術進化の速さと社会の文化のギャップがいちじるしいものとなっている」。
安藤泰至氏「いま私たちに求められているのは、いのちという観点から宗教を問い直すという姿勢ではないだろうか」。
佐藤優氏「プロのインテリジェンス屋はAIを信用しない。教養の重要性を多くの人が認識すべきでしょう」。

 

ディスカッションのラスト、セイゴオは諏訪の気象学者・藤原咲平の科学エッセイ『雲をつかむ話』を引き合いに、“不思議”がわからなければ、神秘も心も科学もわからないと説き、宗教シンポジウム全体の意義を総括しました。

 

「現代社会において、“心”の正体はますますわからなくなりました。このままでは宗教、民族の問題は複雑化し、立ち行かないほどの過激さを増していくことになるでしょう。だからこそ、経済や科学や文学といった人間のあらゆる表現活動を総動員させて、歴史や宗教を振り返ってみる必要があるのです。」

 

 

 

なお、宗教シンポジウム全3回の内容は、各回随時KADOKAWAから書籍化されます。すでに第1巻『宗教と資本主義・国家』は刊行中、第2巻『宗教と暴力』は4月20日刊行予定です。また、今回レポートした最終回『宗教と生命』は、シンポジウムの内容に加え、レギュラー登壇者3名(セイゴオ✕佐藤✕池上)による特别鼎談を収録し、今年の10月頃に刊行予定です。