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2023.04.17 PUBLISHING

【Publishing】千夜千冊エディション『昭和の作家力』まもなく発売

千夜千冊エディション(角川ソフィア文庫)28冊目となる『昭和の作家力』が4月25日に刊行されます。今回の表紙カバーは、なんとキスをする男女のクラシカルな写真。“「思い出す」にはあまりに近い”という意味深な帯コピーとともに、昭和ロマンの香りを醸し出しています。

 

カバー写真は今井正監督《また逢う日まで》(1950)より、日本映画史上屈指の名場面といわれる“ガラス越しのキスシーン”。岡田英次・久我美子主演。

 

『昭和の作家力』は、『日本的文芸術』『源氏と漱石』につづく日本文学篇第三弾という位置づけでもあります。そのタイトルどおり、戦争と敗戦という未曽有の体験を経た昭和日本の姿を、数々の傑作や問題作を取り上げつつ、またそれぞれの作家たちの生きざまを紹介しつつ、あぶりだしています。取り上げるのは萩原朔太郎・中原中也・斎藤史といった詩人たちから江戸川乱歩・久生十蘭・澁澤龍彦らシュール不思議作家まで、『吉原御免状』『大菩薩峠』『丹下左膳』などのヒーローものから『北条政子』『細川ガラシャ夫人』『婉という女』などの歴史女性ものまで、さらには大岡昇平『野火』・井伏鱒二『黒い雨』・井上ひさし『東京セブンローズ』・野坂昭如『この国のなくしもの』・高村薫『新リア王』などなどセイゴオがこよなく愛する作家たちの乾坤一擲の作品も。

 

表紙カバーこそはロマンチックながら、昭和日本の抱えた矛盾や葛藤がひりひりと迫ってくるような一冊となっています。

 

本書に収録している昭和の本たちとともに。いずれもセイゴオが所蔵し愛読していたもの。『黒い雨』と『山羊の歌』のあいだには萩原朔太郎の『青猫』が隠れている。

 

 

いま昭和が語られているかといえば、そうとは言えない。基地・団地・墓地・遊園地・戦地の“五ち”はほったらかしで、見て見ないふりをするだけだ。劣化する現在日本の大半の病根はほぼ昭和にあるのだから、新たな“有事”に出くわす前に、その中身を浴びておいたほうがいいはずだ。そんな思いをこめて構成し、加筆してみた。・・・・・ 松岡正剛による追伸 「昭和、どうする?」より

 

 

 

『昭和の作家力』(角川ソフィア文庫)

2023年4月25日発売 1700円(税別)

 

第一章 中心から逸れて

萩原朔太郎『青猫』(665夜)
江戸川乱歩『パノラマ島奇談』(599夜)
大佛次郎『冬の紳士』(458夜)
阿部公房『砂の女』(534夜) ほか7冊

 

第二章 ヒーロー・悪・復讐

中里介山『大菩薩峠』(688夜)
坂口安吾『堕落論』(873夜)
宮尾登美子『鬼龍院花子の生涯』(839夜)
大藪春彦『野獣死すべき』(560夜) ほか5冊

 

第三章 歴史の影を射る

永井路子『北条政子』(1119夜)
大原富枝『婉という女』(741夜)
村山知義『忍びの者』(929夜)
藤沢周平『半生の記』(811夜) ほか6冊

 

第四章 ニッポンを問う

大岡昇平『野火』(960夜)
松本清張『砂の器』(289夜)
中上健次『枯木灘』(755夜)
高村薫『新リア王』(1407夜) ほか7冊

 

千夜千冊エディションの表紙カバーは、いつも造本設計を担う町口覚さんと町口さんのスタッフの皆さんが何種類ものデザイン案を用意し、セイゴオ・角川編集部はじめ全メンバーが喧々諤々の協議をしたうえで決定している。今回はなんと二十数種類もの多種多様なデザイン案を町口チームが用意してくれ、最終的には多数決でこの古い映画の「キスシーン」を使ったデザインが選ばれた。

 

写真左側の一冊に覗く口絵写真は、都内にある旧江戸川乱歩邸の書庫で撮り下ろしたもの。現在は立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センターによって管理されている。

 

記事:太田香保

撮影:寺平賢司