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2023.02.25 PUBLISHING

【PUBLISHING】千夜千冊エディション27冊目『源氏と漱石』刊行

2月25日、千夜千冊エディション27冊目にして、『日本的文芸術』に続く日本文学第二弾となる、『源氏と漱石』が刊行。このタイトルどおり、一五六九夜から一五七一夜まで三夜にわたって綴られた大長編『源氏物語』と、漱石をはじめ鷗外・露伴・藤村などの明治の文豪たちの千夜が一堂に会するユニークな一冊です。

 

 

表紙カバーには、白描画の平安女性と、イラストレーターのはぎのたえこさんによる漱石が、シンクロするように頬杖をついている。字紋は「紫」。

 

セイゴオが、満を持して『源氏物語』を千夜千冊にとりあげたのは二〇一五年一月。「その1」では紫式部の物語づくりの魂胆と手法を概括しながら「源氏読み」の多様なあり方を案内。「その2」では五十四帖の全あらすじを、そこに登場する代表的な和歌とともに、セイゴオ自身が耽溺しながら紹介。「その3」では紫式部が描いた「もののあはれ」と「いろごのみ」をめぐりつつ日本文化の深層を読み解き。以上、千夜千冊史上最長の約10万字ぶんのテキストを、本書の第一章「源氏という構想」にまるまる収録しました。

 

続く第二章は「古典の風味をつなぐ」。小西甚一や高橋睦郎による日本文学案内をかわきりに、『和漢朗詠集』『山家集』『とはずがたり』から其角、芭蕉、井上井月まで、絶妙なラインナップによる古典案内となっています。

 

第三章「近代との遭遇」は、打って変わって磯田光一『鹿鳴館の系譜』をかわきりに、尾崎紅葉・正岡子規・夏目漱石・森鴎外・幸田露伴・會津八一・斎藤茂吉・堀口大学と明治の文豪たちをずらりと揃え、島崎藤村『夜明け前』で締めくくります。

 

 

セイゴオは、かねてから、「源氏」と「漱石」をつないでみたい、「もののあはれ」と「可哀想だた惚れたってことよ」をいっしょに語りたいと思ってきたのだそう。『源氏物語』こそは日本文学が獲得した表現と技法のすべてを暗示していたのではないか、それが西行や芭蕉や西鶴をへて明治の作家たちに及んでくるなかで、いったい何が変化してきたのか。そこを一気通貫してみることで、日本文学が秘めてきた「試み」について、いまだ議論されていないことが見えてくるのではないか。そんなふうに折々めぐらしてきたことが、本書の編集意図になっていると言います。

 

もちろん、日本という方法をめぐって、既刊の『ことば漬』『芸と道』『面影日本』『日本的文芸術』とも呼応する一冊になっています。

 

左は源氏香「松風」をあしらった香箱

 

千夜千冊エディション『源氏と漱石』

角川ソフィア文庫 2023年2月25日刊

1,650円(税別)

 

第一章 源氏という構想

紫式部『源氏物語』その1・その2・その3(1569~1571夜)

 

第二章 古典の風味をつなぐ

小西甚一『日本文学史』(1049夜)

藤原公任『和漢朗詠集』(158夜)

保田輿重郎『後鳥羽院』(203夜)

西行『山家集』(753夜)

今泉準一『其角と芭蕉と』(1573夜)

江宮隆之『井上井月伝説』(454夜)

ほか

 

第三章 近代との遭遇

磯田光一『鹿鳴館の系譜』(131夜)

尾崎紅葉『金色夜叉』(891夜)

夏目漱石『草枕』(583夜)

森鴎外『阿部一族』(758夜)

幸田露伴『連環記』(983夜)

島崎藤村『夜明け前』(196夜)

ほか

 

一足先に手元に届いた見本をさっそく読み耽りながら、マーキングを入れるセイゴオ

 

記事:太田香保

写真:寺平賢司