最新情報- 2025.12.25 REPORT
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【REPORT】玄月音夜會第六夜 小室等さんと六文銭挽歌
2025年12月18日、玄月音夜會第六回を開催しました。ゲストは、小室等さんと六文銭の皆さん。小室さんはセイゴオが二十代のときに出会い、いっしょに「フォークの旅」をするほど親交があった方であり、セイゴオ唯一の作詞作曲による「比叡おろし」を長く歌いつづけてくださっている方です。
小室さんは、「日本語の歌を大事にしたい」という思いを抱いて1968年にフォークグループ「六文銭」を結成します。その翌年、セイゴオは小室さんと出会い、編集長をつとめる高校生向けの読書新聞「ハイスクール・ライフ」に「六文銭挽歌集」というコーナーをつくり、毎号小室さん作の新曲を紙面上発表するという企画をスタートさせました。作詞は谷川俊太郎、唐十郎、大岡信など、そうそうたる言葉の達人たちでした。
小室さんは、そんな多様な人々との出会いのきっかけをつくってくれた「松岡さんへの感謝の思いを込めて」、一夜かぎりの音夜會のプログラムを組み立ててくださいました。第一部は小室さんによるソロ、第二部は六文銭の皆さん(+及川恒平さん・四角佳子さん・こむろゆいさん)も参加してのカルテットという構成で、「六文銭挽歌集」からも計4曲を披露してくださいました。
若きセイゴオが小室さんとの親交を通して味わいつづけたであろう、「日本語が乗るための音楽」の味わい深さ、愛おしさ、切なさに酔いしれる格別な一夜となりました。

ギターを抱えて登場した小室さん、来場者に見守られながら数分かけてゆっくり調子を整え、1曲目の「あげます」(詞:谷川俊太郎)をふわりとスタート。

進行は松岡正剛事務所の太田香保。小室さんとセイゴオの出会いのエピソードを紹介しながら、初対面のときのセイゴオの印象を小室さんにうかがう。「一言でいえば、かっこいい人でした。なんでも答えてくれる人。汲めど尽きせぬ、すばらしい人でした」。

「希望について私は書きしるす」は小室さんが谷川俊太郎さんと何曲かつくったプロテストソングのひとつ。「いま一番松岡さんに聞いてほしい歌」とのこと。思いを込めて、二回続けて演奏してくれた。

小室さんの娘さんで六文銭メンバーのこむろゆいさんが時折ステージに出て、進行をサポートしながら、それぞれの曲にちなむ小室さんのとっておきのエピソードを披露。「さすらいの歌」(詞:唐十郎)、「雨が空から降れば」(詞:別役実)、「銀座ヤマハのラブソング」(詞:小室等)、「誰かが風の中で」(詞:和田夏十)を次々に演奏。

休憩時間に来場者にふるまう和菓子を、まほろ堂蒼月の店主・山岸さんが説明。セイゴオの曲「比叡おろし」にちなんで、冬の比叡山に見立てたオリジナル菓子。なかには栗が忍ばされている。太田からは、「比叡おろし」は大学生のセイゴオが失恋をきっかけにつくった歌だったことが明かされた。

第二部は六文銭の皆さんが勢ぞろい(左から四角佳子さん、及川恒平さん、小室さん、ゆいさん)。メインボーカルとコーラスを自在に入れ替えながら、「六文銭挽歌集」より、「私は月に行かないだろう」(詞:大岡信)、「思い出してはいけない」(詞:清岡卓行)、「まっかな夜の道行」(詞:佐藤信)、「髭のはえたスパイ」(詞:別役実)の4曲が披露される。

本楼の本棚には、「ハイスクール・ライフ」に掲載された「六文銭挽歌集」全10曲をパネル化して展示。それぞれの楽譜のレイアウトは、掲載当時のもの。

及川さんのボーカルで、やはり六文銭が持ち歌としてきたセイゴオ作詞の「それから」(曲:岩沢幸矢)も披露された。「それから激しさは おとといに向かって逃げて行った 落としたんだろうか……」。

四人の力強いボーカルとコーラスによる「12階建てのバス」。「ハイスクール・ライフ」のアートディレクターであり、若きセイゴオが編集デザインの薫陶を受けたという小島武さんの作詞によるユニークな曲だ。

ラストは、小室さんが長きにわたって持ち歌にしてこられたセイゴオ作詞作曲の「比叡おろし」を、情感を込めて歌いあげる。「うちは比叡おろしですねん あんさんの胸を雪にしてしまいますえ」。小室さんが初めてこの曲のことをセイゴオから聞いたときは歌詞が一番しかなかった。小室さんの勧めで、二番と三番がつくられたという。

「比叡おろし」の演奏中、若きセイゴオが出演した唯一のコマーシャルフィルムの映像がモニターに映される。マントを来て冬枯れの森にたたずんでいる。「夕焼けは よそゆきマント 光る銀の靴を はいていたそうな」という二番の歌詞を彷彿とさせる。

演奏会後は恒例の白百合醸造の内田由美子さんによるお料理とワインの懇親会(写真後方は音夜會マダムの傳田京子さん)。小室さんと四角さんが、料理の美しさに驚きながら内田さんの説明に聞き入っていた。

内田さんお手製のフルーティなホットワインとともに、目にも鮮やかなフードの数々。

お客さまとして駆けつけたあがた森魚さんと小室さん・及川さん。あがたさんは音夜會第一夜のゲストだが、以降の音夜會にも折々参加してくださってきた。

懇親会終了後、小室さんはスタッフたちによる記念撮影に応じながら、背もたれに「松岡正剛」の名がプリントされたディレクターズチェアに座って、セイゴオそっくりなポーズをとってくれた。
★玄月音夜會次回第八回にして最終回は、1月28日(水)です。ゲストは中村明一さんと小林啓子さんに加えて、ギタリストのティム・ドナヒューさん、キーボードのアービッド・オルソンさんの参加も決定しました。
