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2018.06.22 EDITING

「千夜千冊エディション」学習会レポート

5月25日に刊行がスタートした文庫シリーズ「千夜千冊エディション」。第1弾の『本から本へ』と『デザイン知』はたちまち重版が決まり、新聞やメディアの取材が続くなど、大きな話題となっています。

 

一方、編集工学研究所では「千夜千冊エディション」がどのような意図やプロセスで制作されたのか、造本やカバーのデザインにどんな技法が駆使されているのかをリバース・エンジニアリングすべく、「千夜千冊エディション」学習会を行いました。章立て、構成の編集工学的な解読をはじめ、表紙や扉絵のデザインおよび“字紋”の意匠化のヒミツ、文庫を起点にして他のプロジェクトにどう活かしていくかについて、喧々諤々の議論がスタッフのあいだで交わされました。

 

 交わされた意見をまとめて整理する編工研スタッフの橋本英人
 
スタッフからひとしきり感想・意見が出たあとは、セイゴオが”千夜千冊エディション”完成にいたるまでの心の内と、編集中の思索プロセス、今後の文庫プロジェクトにかける思いをスタッフたちに語りました。

 

 「文庫らしさを残しつつ、センセーショナルな本を作ろうと1年ちかく奮闘してきた。出すからには“文庫革命”を目指したかった。20夜程度収録しているけれども、選定するためにはこの3、4倍の千夜千冊をプリントアウトして、並び替えたり赤を入れながら、編集方針を定めて数を絞っていった。ちょうどミュージシャンがライブやコンサートごとに曲のセットリストつくって、名曲や新曲をいろいろ組み合わせて歌うのと近いことを本の編集でやっているような感じだった。その編集の臨場感が伝わるように、“てにをは”や“改行”、“段落”を細かく変えて洗練させていきながら、大幅な加筆修正を施した。もともと千夜千冊は、原書のつまらない部分は一切カットして、松岡独自のフィルターで本の内容を凝縮しているし、ぼくと本、あるいは著者との付き合い方、日々の感覚も文章の中に織り込んでいる。多重、多層的でありながら、ぶっちぎりな内容になっていると自負している。あとは松岡正剛事務所と編集工学研究所が協力して、どのように〈千夜千冊エディション〉を世の中に発信していくべきかを常日頃考えてほしい」(セイゴオ)
 
学習会には『千夜千冊エディション』のデザインを手がける町口覚さんと、口絵撮影をしたカメラマンの熊谷聖司さんもかけつけてコメントをいただきました。

 

 「松岡さんからは“よく練られた逸脱を目指しなさい”、“〈読む〉と〈見る〉、どちらのデザインも徹底しなさい”というヒントをいただいた。それをああでもないこうでもないと試行錯誤を重ねて、なんとか納得のいくフォーマットが完成しました。こんなにも著者や編集のみなさんとコミュニケーションしながら制作していくという体験をこれまでしたことないです。“クリエート”とは本来こうあるべきだということを改めて気付かされましたね」(町口)

 

今後も松岡正剛事務所と編集工学研究所は、毎月「千夜千冊エディション」が刊行されるたびに、意見を交わし合う場を設ける予定です。