松岡正剛のちょっとニューウェーブで、たぶんにフェティッシュなオブジェ商品型録。映像化にあたって、それぞれの物品に込められた松岡の「幼な心の哲学」とともに、すべての挿画から装幀までを担った菊地慶矩氏の捻りの効いた手わざを、「もう一つの函」に収めなおすつもりで演出。モリ川ヒロトー氏の音楽とともに「ザッピング」感覚に遊んでみた。
カメラCANON R5
レンズSIGMA 50mm f/1.4 DG HSM/Art,
EF85mm f/1.4L IS,
EF100mm f/2.8 macro,
EF24-105mm f/4 L IS
ライティングLEDライト 懐中電灯(LED) 自然光
動画撮影モードFHD 1920x1080 23.98fps
故郷金沢を拠点に活躍するマルチアーティスト。ハノーバー万博日本館演出全楽曲を作曲、FAUCHONホテル京都全客室のための作品写真を撮影、東アジア文化交流使(文化庁)として韓国で「金沢映像展」を開催、毎年の金沢おどり(金沢芸妓衆総出演)を映像演出など、多岐にわたる仕事を展開。「感情をそのまま音楽に、観たままを写真に、それらを組み合わせて映像を」が創作のモットー。金沢を偏愛し、日々ピアノ即興に耽溺。
https://www.facebook.com/hirotoh.morikawa/
編集工学研究所デザイナー。イシス編集学校のメディア全般、Web千夜千冊トップ画像、『情報の歴史21』などを担当。また吉村堅樹と共に千夜歓談Podcast「おっかけ!千夜千冊」を企画し、千冊小僧として松岡正剛の解読に挑戦中。本撮影で使用したスポークはその放射線力に心惹かれた穂積が持ち帰った。
インダストリアル、インテリア、プロダクト、グラフィックデザインを経て独立。1991年より作家活動を開始し1995年にアトリエを米国ニューメキシコ州サンタフェに移行し、本格的作家活動に入る。2000年に帰国、現在は主にグラフィックデザインやイラストレーション、アートの分野で活動している。
https://www.mooncrow.co.jp/
2009年にイシス編集学校入門。松岡正剛のコトバとカラダの編集芸に憧れて、『意身伝心』、近大DONDEN、KADOKAWA武蔵野ミュージアム、『情報の歴史21』など様々なメディエーション・プロジェクトに参画する。奇想漫画家・駕籠真太郎はじめ、ポップでパンクな「サブカルズ」の動向にも目を光らせている。
QUIM JONG DAE [WORKS]/駕籠真太郎「GOZ」連載中 [企画・編集] /
猫と月球儀
菊地さんのイラストは、切り絵や鉛筆画などの手作業と、イラストレーターを使ったデジタルワークが絶妙に重ね合わされている。何気なくページをめくっていると気づかないけれど、クローズアップしてみると、細密な点描や鉛筆の筆跡などが見えてくる。ディテールに菊地さんのフェチや息遣いが感じられる。パカリと割れた月球儀の表面も細かな点描で描かれている。
7冊の雑品屋
7つの章に合わせ、7冊の本を並べて撮影。同じ本でも、並べ方、見せ方によって様々な表情の違いを見せる。ページをめくれば、「型録」でもある『雑品屋セイゴオ』の品々を堪能できる。
菊地慶矩のコンテ
書籍のレイアウトを組む際に、イシス館本楼のブビンガ(鉄木の机)の上にイラストとコンテ用紙を並べて、菊地さんがその場でレイアウトを決め込んでいったという制作エピソードを再現し撮影した。作品中の映像は音楽の長さに合わせ1.5倍速で再生してある。
遊び心を函に詰める
目録(目次)で松岡さんが各章を、「赤函」「橙函」「黄函」「緑函」「青函」「藍函」「紫函」と色函に見立てたことにヒントを得て、実物の色函を作成した。紙は和紙で、箱には各章の扉絵を印刷し、中には松岡さんの少年時代の写真、お手製の数珠、本文中のイラストなど遊び心を詰め込んだ。写真では菊地さん制作の切り絵と一緒に並べて撮影した。
揺れる透過短冊のフレーズ
本文中の言葉を抜粋してOHPフィルムで制作した「短冊」を、LEDライトで透過して撮影。映像作品中の「いらっしゃい、」「いらっしゃい。」のシーンはロウソクの光で撮影した。
シダと電気冷蔵庫
松岡さんがニューヨークのスラム街に前衛映像作家のジャック・スミスを訪ねた際、「冷蔵庫に繁殖するシダ」を見せられ息を吞んだというエピソードにヒントを得て作品中の「電気冷蔵庫」を撮影した。写真は、本文中の「電気冷蔵庫」のページにシダの影を投映して撮影した。
電気冷蔵庫の幻想譚
この数秒のシーンを撮るために3kgのドライアイスを用意したが、冷蔵庫がドライアイスのスモークを吸いとってしまうため思うような〝絵〟にならず悪戦苦闘。最後には当初のイメージを超えるものが撮れたが、撮影にはアクシデントがつきものであり、瀬戸際にならないと撮れないものがあることを今回も痛感した。
松岡正剛の風姿花伝
松岡さんに透過紙の後ろに立ってもらい、その後ろからLEDスポットライトを入れてシルエットを撮影。松岡さんが本文中に出てくる扇子を手に持ち、まるで能役者のような所作で開いた扇子を徐々に閉じて身体に引き寄せていく瞬間を押さえた。映像作品中には使用しなかった一枚。
手ずれの『雑品屋セイゴオ』
約6ヶ月に渡った制作で、常に私の傍らにあった『雑品屋セイゴオ』。手垢や擦れで本がどんどん「もの」になっていき、やがてイラストまで自由にリプレゼンテーションしだす。書斎の窓から差し込む光がそれを助長する。